宿坊とは

  全国の有名な聖地には宿坊がありますが、これは簡単に言うと「参拝者をお泊めして、参拝前に心身を清める(潔斎する)ための宿」です。羽黒山の門前町手向(とうげ)地区にも宿坊があります。宿坊と言えば、お寺の宿坊をイメージしますが、羽黒山の宿坊は神社系の宿坊がほとんどです。宿坊では、護摩祈祷や祈祷を行いますが、坐禅等をする宿坊もあります。

  羽黒山の山伏には、近世では、清僧山伏と妻帯山伏と里山伏がいましたが、現在では妻帯山伏と里山伏のみです。特に手向地区の妻帯山伏は、出羽三山神社から祝部(はふり)を命じられ、自分の宿坊に与えられた霞場や、檀那場に出向き、祈祷をして出羽三山信仰を広めます。

 霞(かすみ)とは元々、宿坊の檀家ともいえる霞場(かすみば)のことです。出羽三山の宿坊は、東北地方を霞場、関東地方を檀那場として巡回してお礼を配り、祈祷し、出羽三山への夏山登拝を案内します。檀家の人達は参拝の際に、それぞれ担当する宿坊に泊まります。

 

 


  全国からくる檀家の人達は、「講中(こうちゅう)」を組織して、出羽三山を参拝します。「講中」とは、交通が発達していなかった時代、費用をみなで出し合って、毎年数人が出羽三山参りをしていました。「講中」のおかげで、一生に一度は誰もが三山参りをすることができました。講と宿坊には古くから続く、山と人々との関わりを見ることができます。

  檀家の講中の人たちの宿泊施設として営まれてきた宿坊ですが、もちろん現在は、一般客も泊まれます。宿坊では講中の人達を迎えるのに、家族同然の気心が知れた人達を大切にしています。宿坊は、江戸時代後期になると340件ほどありましたが、その後、明治40年代で150件ほどあった宿坊も戦前には60数件、そして現在では30数件と減少しています。平成5年には羽黒山に180万人あった参拝客もが、その後減り続け、東日本大震災の翌年には60万人にぐっと減りました。

宿坊の精進料理

   現在、精進料理を食べさせたり、観光客を宿泊させる宿坊も多くなり、色々な人にも宿泊していただけるように間口を広くしています。普段の旅館とは違う宿泊スタイルを喜んで来る宿泊客も多くいます。手作りの精進料理を味わいながら心身を清らかにすることもよいでしょう。

 

 

 


参考文献 : 戸川安章「出羽修験の修行と生活」・佼成出版社(1993

         戸川安章「出羽三山と修験道」・岩田書院(2005

         鶴岡市羽黒庁舎産業課観光商工室「羽黒出羽三山の里はぐろ」観光ガイドマップ

         

 


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